ダニー・ボイル監督「スラムドッグ$ミリオネア」感想


無一文から伸し上がるには、当然体や頭が資本。
本作の社会の下層からドンドン伸し上がって行くって様は、百姓のせがれから太閤にまで上り詰めた秀吉の立身出世譚にも似て痛快でたのしい。よくよく考えるれば悲喜こもごもであるけど、成功譚の語り口は、貧乏エピソードに明るさと疾走感を加味している。
主人公のジャマール(デーヴ・パテール)は、インド版「クイズ$ミリオネア」に挑戦しどんどんクリアーしていくんだけど、みのもんた司会の「クイズ$ミリオネア」は、イギリスのテレビ局がつくった「Who Wants to Be a Millionaire?」が元祖であるようだ。局が元締めとして、この番組フォ―マットを売り歩き結果、世界中110カ国で放送されたとか。
十中八九、四択クイズに正解し続けるならどんどん金持ちになっていきますよ的このクイズショーは、欧米で誕生し発展してきた時資本主義というゲームのメタファーなんだろう。その意味で、クイズを勝ち進むジャマールはグローバル経済の土俵にのぼったインドという国家そのものって寸法だ。
けれど、ジャマールが英雄的なのはクイズを勝ち抜き金持ちになっていくからではなくて、純粋な参加動機にある。インド人でなくてもやっぱ金じゃないよなーってグッとくる。
つーか、難病悲恋モノが無限ループ的に跳梁跋扈する不健康なニッポン的映画状況をみるにつけ、剛直な純愛ストーリーを描きうる、インドの底知れないパワーみなぎる感がうらやましい。

関係ないけど、ぼくの故郷である沖縄のリゾート業界なんかにもインド資本が参入してきてる模様。で、印僑系に買われた某リゾートホテルに幽霊がでるとかでないとかのウワサがあったとき、連中は本国から祈祷師をつれてきたとか。
霊媒業界もグローバル化か。ユタ商売もうかうかしてられませんな。