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○司馬遼太郎「覇王の家」読み中
(新潮文庫 ISBN:9784101152387,ISBN:9784101152394)
家康にフォーカスした司馬遼太郎得意のおしゃべり人物式伝小説。
新興織田と名門今川に挟まれた弱小のサダメか人質として辛酸をなめた幼少時代から信長の同盟を機に段々と運がひらき始め、終には天下獲る家康流覇者の歩みを描いたもの。
徳川家康。三河の弱小軍勢の長にすぎなかった彼が、幾度かの危機や苦難のすえ、時代を制し天下の頂点にたった。にもかかわらず、家康にはまったく英雄的な清々しさが微塵も感じられない。
「痛快」の反義語が、
「家康」。
ではないかと思うくらい。
司馬遼は、そんな家康の人生を一種の喜劇として書こうとしたのだと思う。
しかし、調べれば調べるほど、小心さとケチ振りが掘り出され、圧倒的にツマラナイ覇者・家康が浮かび上がってくる始末で、さすがの白髪おかっぱのも、この逆説的英雄に悪戦苦闘しているようだ。
「覇王の家」を愉しく読むコツは、家康と格闘する司馬遼を面白がれるかどうか、その一点にかかっていると思う。
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