○善助と恵子の戦後、忘れられた日本人


野村芳太郎監督「続・拝啓天皇陛下様」を観た。以下その感想。
ウダツの上がらないニッポン兵、山口善助の生き方を通てし、ニッポンの戦中戦後を描いたもの。コメディー映画と銘打たれているが、抱腹絶倒というものではない。
親と死に別れた孤児、善助は盗み食いで腹を満たすような日々を送っていた。ある日、善助はその現行犯で店主に捕まる。町内は皇太子誕生祝いの提灯行列が練り歩くなどお祭りムード一色。店主は、天皇陛下に感謝しろよと善助の悪行をゆるし、そのうえ握り飯までめぐむ。
周囲から疎まれ、蔑まれることが日常だった善助だけに、他人のちょっとした心づかいにとても敏感だった。簡単にいえば惚れっぽい性格で、字を教えてくれた、おなご先生(岩下志摩)や、戦中善助の相棒だった軍用犬の飼い主、久留宮ヤエノ(久我美子)へ対する善助の敬慕の想いも、結局彼の不幸な境遇が培ったものだった。
青年善助は便所の汲み取り屋になった。大人は蔑み、子どもからはバカにされる日々。だから入隊すれば三度の飯と住処にありつける軍隊は、善助にとって極楽だった。善助は軍隊の大元締めである天皇に恩義を感じ、敬慕した。
敗戦は善助のパラダイスの瓦解を意味した。
戦後、善助は床屋の中国人・王万林(小沢昭一)と再会を果たす。彼は闇市で食堂やパチンコ屋で儲けていた。商売の拡大を計画する王は、善助に手伝ってくれるように頼む。しかし善助は王の羽振りの良さに釈然とせず、王の申し出を断り、儲けバナシをふいにする。
善助の戦後は生き方の不器用さがついて回る。やがて善助は軍歌好きの娘、恵子(宮城まり子)と所帯をもつ。善助は鉄くず屋で稼いでいるが、朝鮮景気もそのうち終わり、鉄くずは屑と化す。生活は逼迫する。。。。
戦後の善助の足取りは痛ましく笑えない。ロードショーされた昭和39年当時、観客は戦後復興期あるあるネタに泣き笑いしたのだろうか。
前作で後輩兵隊だった藤山寛美が教官役で登場。この人、芝居がホントうまい。小沢昭一の嫁役に南田洋子。元阪急ブレーブスバルボンも米兵役で出演。個人的な好みは前作だが、本作の多士済々なキャストも捨てがたい。



続拝啓天皇陛下様
続拝啓天皇陛下様野村芳太郎 多賀祥介 山田洋次

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