○蛍光イエローSF


円城塔Self-Reference ENGINE」(ISBN:9784152088215)読み中。
巨大知性体群とは、ネットワーク化したコンピュータを意図しているようだ。そのコンピュータがある日ふと、この世界すべて、この宇宙全体を計算したいと思った。で、いっせーのせっ!でやったら、計算できちゃった。。。「Self-Reference ENGINE」はそんな設定のおはなし。
宇宙全体を計算し尽くしたとは、巨大知性体群の宇宙全体との統合を意味する。つまり巨大知性体群は宇宙の法則と化したのだ。彼らはこの宇宙全体を支配する神に昇格した。神は遍在する。月や太陽、ハレー彗星、蟹や猿や臼や牛の糞や人間やカップやきそばの中にも巨大知性体群は、ある。
けれど、宇宙全体を計算尽くしたとたん、彼らは愕然とした。
宇宙の外があったのだ。宇宙の外。そこは幾多の別宇宙がふわふわしている空間だった。そして、それら別の宇宙たちは、別の巨大知性体群と一体化したものだった。これが相手に計算される前に計算だ!という演算戦、多宇宙間戦争の発端だった。
宇宙化したコンピューター同士の演算戦は、結果的に時間をぐちゃぐちゃにしてしまった。このぐちゃぐちゃになった時間。それは、人類の生活レベルで珍妙なバグとして出現する。そのバグの根源的な解決する糸口をもたない人類は、その場しのぎの対処でバグ退治に追われるハメになる。このバグ退治的環境の人類は、温暖化や地震や竜巻やコンピューターの誤作動といった災害、災難に翻弄される私たちの姿、そっくりでおかしい。
語り口から察するに作者円城塔は、人類よりも巨大知性体群に寄り添っている。この語りスタンスの絶妙さが面白イメージ連射の引き金だろう。ナイス!


Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)円城 塔

早川書房 2007-05
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