○図書館で借りた本と落語CD。

・犬塚稔「映画は陽炎の如く」(草思社 ISBN:9784794211040)

・「NHK落語名人選 (28) : 四代目 三遊亭円遊」(ASIN:B00005FMD1


犬塚は映画監督、脚本家。戦前戦後通じて映画製作にさずさわった人。ここ最近の俺的座頭市ブームで、座頭市シリーズ初期の脚本家としての犬塚に興味をもった。「座頭市」シリーズは子母沢寛の原作となっているが、彼は取材の折耳にした盲目ヤクザ座頭市ついての短いエッセーを書いただけ。これを土台に電光石火の居合い斬りの達人たるキャラクター「座頭市」をつくりあげたのは、映画第一作「座頭市物語」の脚本を担当した犬塚だったもよう。「映画は陽炎〜」の座頭市関連の箇所で犬塚は、子母沢寛勝新太郎からうけた酷い仕打ちを思い起こし、思い出し笑いならぬ思い出し怒りを爆発させている。思うに犬塚は良い脚本こそ良い映画の根本であると考えた人だった。しかし当時の日本映画をとりまく環境は、製作側も観る側も銀幕スターのスクリーン所狭しと暴れ回る活劇をもてはやした。花形役者さえ出ていれば上等で、ハナシの筋など付録にすぎなかった。そこに犬塚の苦悩の元凶があった。
同時期つくられた雷蔵眠狂四郎を観れば分かるが、「座頭市」シリーズが未だに見応えあるのは、勝新の高いチャンバラ技術のみならず、座頭市キャラ造形によるとことが大きい。長ドスを抜いて派手にチャンチャンバラバラといきたい勝新と無駄な殺生を嫌う座頭市キャラの拮抗が、いいあんばいに作用したのが「座頭市」シリーズだったのだ。
座頭市」シリーズにおける犬塚の貢献をガンダムで推し量るなら、メカデザインの大河原邦男に匹敵するじゃないか。ふとウルトラマンウルトラ怪獣の造形家だった成田亨の不遇を想起した。
去年秋に他界。享年106歳。1901年生まれ!

*追記、「犬塚稔」でググッたら、100歳当時のインタビューがあった。
http://www.eigeki.co.jp/html/read/kantoku/inuduka/


圓遊のCD。「干物箱」という演目がよかった。ちょっと気になってYouTubeで「干物箱」検索すると、志ん朝バージョンがあった。それも観る。ハナシの筋は、夜遊びがすぎて親父に叱られた若旦那が銭湯に行く振りして遊郭に出かけようと作戦を練るもの。圓遊は若旦那が本屋の善公を呼ぶとき、「おまえ」でなく、「きみ」と言わせている。文楽のバージョンも聴いてみたい。


映画は陽炎の如く
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