奥泉光プラトン学園」読了
(講談社文庫  ISBN:9784062758604)


映画「レジェンド・オブ・ゾロ」はアントニオ・バンデラス演ずる仮面の剣士ゾロが活躍する痛快活劇。とにかく主要登場人と人間関係をパシっと説明する冒頭からの正味20分のくだりが素晴らしい。これなら前作「マスク・オブ・ゾロ」を観てなくても安心だと、くつろいだ気分にさせてくれる、なかなか親切なつくりの続編作だ。
別の言い方をすれば、続編というよりも独立した作品として楽しめる仕上がりを「レジェンド・オブ・ゾロ」は獲得しているということだ。
冒頭からの20分のシーンを観て俺は大変満足した。もうこれ以上観なくてもいいと思うほど「レジェンド・オブ・ゾロ」を堪能したと感じた。全体の物語は冒頭で圧縮的に語られているのだから、もはや観るものはバンデラスのずば抜けて暑苦しい顔くらいしかないと思ったくらいだ。皮肉な言い方に聞こえるかもしれないが、そうではない。それが俺の映画観賞スタイルなのだから。
大概の映画はハナシの筋がある。アクション映画なら、主人公は困難にぶつかり、すったもんだのあげくそれを克服したし、愛する家族や異性と抱擁するシーンで終わる。
ハナシの筋なんて、どれも似たり寄ったりだ。主人公がぶつかる困難が、「地球外生命体」だったり、「猟奇殺人事件」だったり、「精密機械とあだ名されるボクサー」だったり、「偉大な親父」するだけなのだ。そしてなんだかんだの奮闘のすえ、それら困難は乗り越えられるものなのだ。
結局俺は映画の醍醐味はハナシを語るその語り口だと思っている。映画の場合それは編集で、小説では地の文だと思う。映画を筋で観ない俺とって、小説も筋なんてどうでもイイ。そういう意味で俺は奥泉作品が相当気に入っている。
奥泉光はの小説をいくつか読んで気づいたことは、彼はスト−リーに頓着ない作家だということ。彼の小説はSFやミステリー風な体裁をとるが、それは単にそれら語り口を採用したにすぎない。
だからSF的な事件やミステリー風の謎解きを期待する読者はひどく面食らうことになる。一見回転すし屋だが、回っているのは寿司でなく、プリンやヤクルトに混じって、ザクやアッガイが流れてくる。なんだ?ここは回転モビルスーツ屋かと思ってると、弥勒菩薩と千手観音の漫才が流れてきた、みたいな。
語り口自体は娯楽小説なのに、奥泉作品は主人公が出くわす出来事は普通の枠を超えている。自由度が高いというかメチャクチャというか。ま、俺はその自由さ加減が大好きだ。



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