岡崎武志「読書の腕前」
(光文社新書 ISBN:9784334033941


ガイドブック、案内本っていうのはだいたい、アレを読め、コレは名著だ、それから誰ソレの何々は必読アイテムだ、ってな具合に本のタイトルを列挙するのが相場だ。そういう意味で岡崎武志「読書の腕間」は読書案内本でない。「読書」という行為そのものが持つ滋養作用(?)や昂揚を、筆者の体験をとおして語る式の「読書」指南本といった風情。
むろん個個の本のタイトルがぜんぜん出てこないわけではない。本のタイトルが挙げられる場合、岡崎は内容云々筆はさかない。語られるのはその本と出合ったきっかけやきっかけにまつわる彼自身の自己認識だったりする。彼は糖尿のヤマイらしいが、じゃ、同病相哀れんでみようと三木鶏朗を手にとったりしている。
要するに読書は読む本の良し悪しでないというわけだ。誰も目に留めないような駄本が巷のリサイクル系古本屋にどっちゃり在庫してあるが、それらをイカすもコロすも畢竟コレ読み手の腕次第ということだ。
本書の購入を実はためらった。手にとったものの、
「本好きの書いた本についての新書なんて、アツ苦しいんじゃないか?」
という悪い予感がよぎった。
予感は幸運にもはずれた。ちょっとアツ苦しくない。むしろ寝苦しい夜、窓を開けると吹き込んでくる風みたいにすがすがしいくらいだ。著者の本の付き合い方に絞られて書かれているのが、風をよぶのだろう。これが本の内容や作家の薀蓄などで構成されていたら、本書はアツ苦しい本だったはず。
ところで、東浩紀ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 」を買った。本屋時代の先輩によれば結構売れているらしい。ジュンク堂池袋も1Fの新刊書コーナーに平積みしていたほどだからやっぱ人気なんだろう。ざっと目を通した。けどイマイチ面白くなかったので、放っぽった。口直しに書棚から関川夏央「豪雨の前兆」をとりだした。すると、「ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 」の東の問題意識と私の司馬遼問題が突然リンクしだした。放おっておいた「動モダ2」を再度読み返した。ああ、コレハコレは大変だ。視司馬遼と西尾維新はつながっているゾと強く確信した。
あっ、なんのハナシだっけ?ああ、そーそー「読書の腕前」だ。この本で一点っ気に食わないとこがある。それはベストセラーを買う人のその動機の著者なりの推察だ。
ベストセラーを買うの人は本を買っているんじゃなくて、話題を買っている。
岡崎はベストセラー本購買者のモチベーションをそんなふうに分析している。
この意見には私はまったく合点がゆかない。だって、俺は話題じゃなくて、東くんの「動モダ2」をやっぱ買ったんだ。司馬遼作品の語り手はキャラ化した司馬遼なんだヨ(なんのこっちゃ?)!!
岡崎にしてもブックオフ100円コーナーで角川の片岡義男の文庫ゲットしたって言ってるじゃないか!アレらもうんと売れた本だよ。かつてのベストセラー本だよ。ベストセラーは旬が過ぎて100円で買うのが腕前なのか?!
読書に腕前あるのなら、流行なんかに左右されないバシッとした眼力があってもイイんじゃないか?



読書の腕前
読書の腕前岡崎 武志

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