絲山秋子「海の仙人」
(新潮文庫 ASIN:4101304513)

俺には生まれ育った沖縄以外に好きな県がある。それは福井県だ。
だが一度も行ったことはない(そういえば、高校の修学旅行は富山は行ったのに福井は行かずじまいだった)。
小学生の時分、親が買い与えた日本都道府県ジクソーパズルが大好きだった。それは各県ごとににピース化されたものだった。
普段は地続きでその境界線があいまいになっているため、そのユニークな形が埋もれがちな各都道府県だが、その47個のピースは、小学生の俺にそれぞれの県の大きさや形を、まさに身をもって教えてくれた。
なかでも、その形のユニークさで一番気に入っていたのが「福井県」だった。「福井県」を一番最初に置くこと。それが俺にとって、日本列島「組み立て」の合図だった。
アノとき何で惹かれたのかはわからない。エニシ?そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
クサレエン。
そう、俺と福井県との関係を一言で表現すんならソレがピッタリくる。高校野球は福井のチーム必ず応援してるんだ。
知ってるか?メガネフレームの国内生産の97パーセントが福井県産なんだぜ。吉田戦車はソレをネタにメガネ相撲ってマンガ描いたんだぜ。これがまたケッサクでさ。
そりゃ、一度は行ってみたいさ。永平寺だろ、東尋坊だろ、越前ガニだろ。。。けど、なんだか照れくさいし、ちょっぴりコワイんだよ。いまさら逢うってのがさ。福井のやつに。

絲山秋子「海の仙人」は、福井県小説である。福井県が舞台であるというばかりでなく、福井県が大好きな男が登場する。
もう俺は、それだけで、きゅーとなった。なんだか胸のアタリがきゅーとしめつけらような、しめつけられないような不思議な気分さ。三度の飯より飯が大好きなこの俺が、飯食うのも忘れてイッキ読みだぜっ、いやー我ながら驚いたよ。
読んでる最中、日本海の潮のにおいが鼻っ先にかおるっていうか、かおらないっていうかそんな感じがしたんだな。で、実感したよ、これは絶対福井だ、って。俺は行ったことないけど、ピンときた。
だから俺は、福井県好きの河野という作中人物にちょっと嫉妬したな。変だよな。だって相手は県なんだぜ。
オナハシ的には、あれだな、中野翠とか爆笑の太田とかに意見聞きたいね、あと誰かな。ま、あとは福井好きな全員によんでほしい。
あ、「天然コケッココー」って誰だっけ、ああ、くらもちふさこ、あの人のファンの意見も聞きたい。
けどさ、福井がこうして小説になるっていうのが、なんだかうれしいのにさ、きゅーってなるんだよなぁ。
ま、いろいろ言ったけど、「海の仙人」は「ぷりぷり県」並みにケッサクなんだよ。つーか、もう吉田戦車なんかとっくに越えちまってるよな。


海の仙人
海の仙人絲山 秋子

新潮社 2006-12
売り上げランキング : 7014

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
イッツ・オンリー・トーク
となり町戦争
アヒルと鴨のコインロッカー
ビューティフル・ネーム
哀愁的東京