yasulog2007-01-21

絲山秋子「第七障害」(「イッツ・オンリー・トーク」併録)読了
(文春文庫 ASIN:4167714019

ラジオで「トヨザキ社長」こと豊崎由美が絲山さんの新刊「エスケイプ/アブセント」をプッシュしてたので、気になって文庫おちしてる「イッツ・オンリー・トーク」を読んでみた。
文庫版の「イッツ・オンリー・トーク」の解説は絲山さんにゾッコンな現役書店員女子が担当していて、これがほんわかしつつも凄味のある文章だったりする。表題作の良さもバシっおさえたイイ解説なので私の出る幕はない。で、代わりに併録の「第七障害」の感想を書いてみた。
「第七障害」は、乗馬クラブで馬に乗っていた女、早坂順子の話。試合中に障害を越えられず馬もろとも転倒。この事故で馬は脚を骨折し、安楽死となった。彼女は馬の死に責任を感じ、乗馬クラブも辞め、恋愛も辞め、群馬を去り上京する。
このハナシは映画になりそうだなと思いながら読んだ。自分が監督の立場なら、どういうカットをきるか、配役は?彼らへの演技の注文は?など考えながら読んだ。
たしか「ボーン・コレクター」の冒頭は、半身不随の名探偵役デンゼル・ワシントンの横顔がにょきっと登場するとこから始まる。映画版「第七障害」も、早坂順子の横顔がにょきっと出るとこから始まりたい。で、このシーンは夢であり、人馬横転事故時の回想でもある。早川順子役は誰が良いかまだ決めていない。
絲山の小説は私はまだこの文庫の2篇しか読んでないのでアレだが、片岡義男テイストを思い起こした。80年代に怒涛のように角川から刊行された片岡義男の小説は大半女性が主人公か、あるいは魅力的な女性が登場する。絲山の描く女は、片岡小説みたいに浮世離れしてはいない。けれど女目線での部屋の内装、インテリア・小物などの趣味を描写する点がとても似ていると思った。
つまり片岡義男も、絲山も女メインで「ハードボイルド」を描いているのだ。ただ、普通のハードボイルド小説と違うのは、とりたてて何も起こらないことだ。この点も片岡と絲山は共通している。
豊崎由美は、絲山を評して「耳がいい」と言っていた。「耳がいい」。たしかに、作中人物たちの会話の自然な感じは絲山の「耳の良さ」のタマモノなのかもしれない(そして、ここが片岡義男との決定的に相違点だろう)。
でも、私にはちょっと「耳が良」すぎるんじゃないかと思った。具体的に言うと、順子の東京暮らしの相方、美緒の歌うような応答は、こんなに全部声に出してると変だと思った。その点、表題作「イッツ・オンリー・トーク」は耳の調和も抜群。
だから、映画版「第七障害」においては、私は美緒役に蒼井優を抜擢し、美緒はクチぱくぱくで歌わないときもあるんだとサジェッションを与えたい。事務所とかなんだかんだで都合で蒼井優が駄目なら、私が自分でやるっ、美緒役を!

イッツ・オンリー・トーク
イッツ・オンリー・トーク絲山 秋子

文藝春秋 2006-05
売り上げランキング : 99848

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
沖で待つ
号泣する準備はできていた
ニシノユキヒコの恋と冒険
イン・ザ・プール
絲的メイソウ



ボーン・コレクター
ボーン・コレクタージェレミー・アイアコン フィリップ・ノイス デンゼル・ワシントン

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-07-14
売り上げランキング : 19208

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
Mr.&Mrs.スミス プレミアム・エディション
インサイド・マン
フライトプラン
60セカンズ ディレクターズ・カット版
エントラップメント (初回限定生産)