ロビン・ウィリアムズ主演「ストーカー」観賞
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン ASIN:B000A0D93U
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サイ(ロビン・ウィリアムズ)は、典型的郊外スーパーの、写真プリントコーナーで働く男。妻子なし、ガールフレンドなし、の独身中年。
彼は写真プリントという自分の仕事に大変熱心であるが、やや度を超している気配がある。ロビン・ウィリアムズは、この中年男の背負う「埋められない孤独」を、過剰気味な接客コミュニケーションで表現している。端的にいえば、サイの人懐っこい笑顔を基本とする接客術は、典型的郊外スーパーの内に併設された写真現像コーナーという店の立ち位置と微妙にズレがある。
「はい、お釣り三百万円!」なんて感じの昭和的商慣行ギャクを、東武東上線大山駅のハッピーロードの肉屋の店主が口にするのは、風情があるし、またそれなりの商売上の合理性があると思う。けれども、同じ台詞をコンビニの店員にやられたら、客の大半はギョッとしてしまうだろう。当人としては誠実な接客のつもりが、傍目には奇異に映る場合もあるわけだ。サイに接客もこれと似た有様で、それは誠実と奇異の間で揺らいでいる、といったあんばい。つまり、やっぱ「微妙」なのだ。
郊外という空間は、ヒトもモノも入れ替え可能であるが故に、住人は見てくれの良いライフスタイルを営みながら実は根源的な不安を抱えている。サイの調子っぱずれの行動のハズレ具合が顕著になった段階で、この映画は「タクシー・ドライバー」へのオマージュではないかと思った。確信はないが、たぶんそうだ。ただ、「タクシー・ドライバー」の大都会の孤独な群衆の独りが突然アグレッシブに自らの「生」を希求したのに対し、郊外の埋められない孤独を背負った男は、建て売り住宅屋のCMで喧伝されたイメージの家族団欒の権化となって世間に復讐する。
とにかく、ロビン・ウィリアムズの人物スケッチの精妙さに脱帽。


B000A0D93Uストーカー 特別編 (初回限定生産)
マーク・ロマネク ロビン・ウィリアムズ コニー・ニールセン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2005-08-19

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