大竹伸朗「全景」@東京都現代美術館


先の日曜、大竹伸朗「全景」展を観た。
先週参加した、池袋リブロでの大竹トークイベントの内容にピンと来るものがあったので、清澄白河まで足をのばした次第。
トークイベントで大竹は、スタイルがないことに悩む時期もあったが、もう今は開き直っているという旨をしゃべっていたから、相当スタイルがごちゃ混ぜのひっちゃかめっちゃかなのかとおっかなビックリ、展にのぞんだが案外一貫して見えた。
今回の全景展は、大竹の小学時代から今日までの作品を時系列に並べるという寸法。ちなみに作品点数は二千点。
大竹の場合、作風を云々するのはあまり建設的な作業でないかもしれない。彼はものの質感やたたずまいに対して鋭敏かつ小学生的に反応するタチのようだ。絵柄やアプローチが変化しても、質感と戯れようとする小学生気分は不変のように感じた。
絵本「ちびくろさんぼ」で、トラたちは、ぐるぐる回ってバターになってしまい、バターはホットケーキになりさんぼのお腹におさまってしまう。この荒唐無稽なハナシが我々に強いインパクトを与え続けるのは、トラというか、「黄色いもの」の質感の目まぐるしい激変・流転のためである。大竹は、ちびくろのトラにとどまらず、一切合財の質感に魅了される、そういうタチの人なんだろうと思う。生活のアチコチに隠れている、ちびくろトラ的な「黄色いもの」に実直に反応し続けた男が、五十のオッサンになった今もソレを持続させているワケだ。つまりその結果の一端が全景展の作品群なのだ。
大竹当人が言うには、物凄い怒りが創作の糧になっているらしい。けども、大竹作品たちは基本洒脱というか、淡いユーモアをたたえていると感じる。
「つくる」という活動は大竹にとって、彼が出喰した、さまざまなものの質感と次々と相撲をとるみたいなことかもしれないと思った。
館からの帰り路、深川の年季の入った店々や立体駐車場に大竹作品がオーバーラップして見え、みんな貼ってるなーなど思いながら歩いた。


大竹伸朗全景展
http://shinroohtake.jp/