細馬宏通「絵はがきの時代」読み中。
(青土社 ISBN:4791762746)


中学の修学旅行は九州だった。長崎を振り出しに熊本、宮崎、鹿児島というルートだったと思う。
長崎の土産物屋で絵はがきセットを買った。グラバー邸や平和祈念像など見物した風物がセットに組まれていたから購入したのだが、買った後内容を点検していて心惹かれたのはちんちん電車の絵はがきだった。
ちんちん電車の絵はがきは私の旅情に火をつけた。
実はひそかに電車に憧れていた。なんせ鉄路のない沖縄の中学生である。電車なんか見たことないのだ。
ちんちん電車の絵はがきは脳内電車イメージを猛烈刺激した。もう普通の電車は嫌だ。絵はがきのアレが見たい。アレが走る姿をこの目で見たい!と希求した。
バスに揺られ修学旅行する中学生の私。しかし脳内の私は別の旅に向かっていた。絵はがきの向こう側、もうひとつの長崎へ。



前略、あなた。
細馬宏通「絵はがきの時代」を読んでいるよ。これは絵はがきの歴史本じゃないよ。絵はがきの登場を機に郵便コミュニケーションがどのように変遷し、どのような脱線があったかを考察するエッセーというオモムキさ。
今日私は日本民藝館に行った来たよ。いろいろ発見もあったよ。和物デザインブームの昨今のせいか、渋谷ロフト買い物気分で館にで足を運んでいる浴衣姿のカップルがいたね。というか、館内土産物コーナーが一番活気があった。客のひとりに婆さんがいて、結局十数枚ポストカードを買われていたけど、真剣に物色している様子はまるで女子学生のようで可愛らしかったよ。
私は何も買わず仕舞いだったけど、その婆さんのことが念頭にあったわけか吉祥寺の本屋で「絵はがきの時代」を買ったのさ。ま、前々から気になっていたから買うつもりだったけど婆さんの印象に背中を押されたのかも。
旅情のかおる本だよ。傑作じゃないかな。著者の細馬さんは私にとって大切な書き手になりそうな予感がするよ。細馬さんは、かえるさんという名義でネットラジオ「ラジオ 沼」をやっているんだけど、この私的ラジオ放送もスコブル面白いんだよ。
この感想も本来なら読み終えてから書くのが筋だろうけれど、きっちりレビューするより昂揚を伝えたい!私の鼻息と伝えたい!と思って、ペチペチとキーボードを叩いているんだよ。だってさ、朝日、読売、日経、それに東京の四紙に書評が載ってんだぜ。私ごときの出る幕はありゃしないよ。
これはアレだよ。とにかく中学ときの脳内修学旅行in絵はがきに匹敵するんだよ。私は誘われているいるよ、絵はがきの時代に。絵はがきの時代はいいなぁ。空気が美味いし、すばらしい絶景だ。
ヤッホー。ヤッホー。ヒャッホーっ!ああ、あなたもここに来ればいいのにー。絶対気に入る。「絵がはがきの時代」。太鼓判ならぬ消印を押すよ。請け合うさ。昼飯賭けてもイイさ。
しばらくこっちに逗留します。
草々。

さて、中学ときの修学旅行のハナシの続きだ。結局、私は長崎でも熊本でもちんちん電車の勇姿を見納めることができなかった。最終地鹿児島で友人らと自由行動の際、見かけた気がするが、時既に遅し。電車熱はすっかり冷めていた(さすが中学生!)。



絵はがきの時代
絵はがきの時代細馬 宏通

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朝日新聞巽孝之評。
http://book.asahi.com/review/TKY200607250383.html


・読売新聞、林道郎評。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20060724bk09.htm


・「ラジオ 沼」、東海道五十三次の思い出の巻。
http://sweet.podcast.jp/home/numa/archives/release/main/2006/06/05_002741.html