坪内祐三「「別れる理由」が気になって」(ISBN:4062128233)を読むうちにどんどん「別れる理由」に気になってきた

図書館の新着棚で「「別れる理由」が気になって」を見つけたので、坪内の新刊じゃないかとぱらぱらと読んでみたら、小島信夫のドエライ小説家魂に腰を抜かしそうになった。
小島信夫の「別れる理由」は、1968年10月に始まり、1981年3月に連載を終えたらしい。つまり「別れる理由」はエラく長い小説だ。
1958年生まれの坪内は開始当初まだ10歳で彼が22歳の青年に成長する期間、小島は「別れる理由」に取り組んでいたわけだ。
ちなみに私のオヤジは、68年当時38歳なので、連載終了時は50歳。
人生ってスケールで計るなら、やっぱりべらぼうな歳月を「別れる理由」に小島は費やしていると言えるだろう。
けれども、このながーい小説は最初から意図されたものではないようだ。
「群像」1968年1月号から短編連作「町」の連載を始め、同年10月号「町」連載10話目のタイトルが「別れる理由」だったという。
30ページより引用。

以後、このタイトルの挿話がどんどん増殖して行きー例えば一九七二年二月号の同連載のタイトルまわりには、「別れる理由」(その四十二)と「町」(第五十回)とが併記され、「町」が消えて「別れる理由」に絞られるには一九七三年九月の「別れる理由」(その六〇)からであるー、最終的には原稿用紙四千枚を越える超大作になったのだ。

挿話あった「別れる理由」は、「町」を飛び出し、旅立った。むろんゆくアテのない旅に。
小島自身も当時それが超大作に育つとは、思ってなかったのではないか。
坪内の「「別れる理由」が気になって」は、そんな茫洋とした旅人「別れる理由」の足跡を追尾するドキュメンタリーと考えればよいだろう。
むむむーっ、気になってきたなぁ、小島信夫、そして「別れる理由」。


「別れる理由」が気になって
4062128233坪内 祐三

講談社 2005-03-26
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