○おーい、司馬遼

スクラップ・ジャーナル5,「ロマンチックラブ・イデオロギーはどこへ行くのか」より引用。
http://masa-888.hp.infoseek.co.jp/scrap5.html

さて、この「ロマンチックラブ・イデオロギー」であるが、ずーっと昔から人類が持っていた考え、大げさに言えば人類普遍の真理であるように思うかもしれない。しかし実際は、ごくごく最近に浸透した考えなのだ。

 西欧では、18世紀になって貴族社会で芽生え、19世紀に富裕層(金持ち)に広がり、一般大衆に浸透したのは第2次世界大戦後である。それまでは、結婚は政治的・経済的行為であり、恋愛とは切り離されていたのである。だからそれまでは人妻の恋が許されていたし、中世の騎士たちは愛する姫を、セックスを目的とせず遠くから眺めるだけという恋愛至上主義を当然のこととしていたのである(いわゆる騎士道)。

司馬遼の「大坂侍」(ISBN:406183617X )は短編集。収録の三つほどしか読んでないが、テーマは「武士道批判」のようだ。
元来武士団は関東に繁栄を築き、その気質を養ってきた。風土人格形成説を採用する司馬遼にしてみれば、当然その精神、思考というものは、関東風土の発露に映るだろう。
どうやら、「大阪侍」収録の各短編は、そうした関東の風土が育んだ武士スピリッツを、関西的人格でツッコミを入れるという体裁になっている。
女を男の従属と見ない関西的騎士道精神(!)を隣合わせ、関東風土の権化、武士の価値観の欠点を浮き立たせることが司馬遼の魂胆だろう。
ハナシ的には面白い。しかし、人は風土の化身という独特な人間観。。。それは司馬遼の霊感の泉なんだろうが、やっぱ少々大仰に思う。

大坂侍
司馬 遼太郎

講談社 1985-11
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