ディクスン・カー「皇帝のかぎ煙草入れ」
創元推理文庫/井上一夫訳 ISBN:4488118119
7ページより引用。

底抜けといってもいいくらいのお人よしで、疑うこともしらないくせに、外見はイヴはすごい男殺しのようにみえるのだった。

という一文から、イブ・ニールに若尾文子をキャスティングする。
花屋を営むプルーラトゥルは、女としての栄達を天性の抜け目のなさで、着実にたぐり寄せるタイプ。で、加賀まりこを抜擢。
私の若尾じゃなくて、イヴに無礼千万にも殺人の嫌疑をかけるイブの婚約者のトビイ・ロウズの妹、イヴェット役に吉永小百合という妙手を思いつく。
むろん、往年の彼女たちだ。
イヴの先夫、ネッド・アトウッド役は宍戸錠でキマリ。宍戸はカー作品に欠かせない俳優だ。警察署長のゴロン氏はバンジュン、探偵役のダーモット・キンロス博士役は誰が適当かわからないが、逆にいえばだれでもイイ。石立鉄男でもいい。
というか、「皇帝のかぎ煙草入れ」はイヴさえいればイイのだ。イヴ萌の小説として読めばよい。犯罪や謎解きや登場人物もすべてイヴ・若尾・ニールのための奉仕する道具建てと了解する。
今後、カー作品をぼちぼち読んでいくつもりだが、<トリックの大御所>というレッテルをとりあえず白紙に返したい。カーの意図した伏線やギミックを大幅に誤読しつつ、文芸的滋味の享受することこそ、俺がディクソン・カー作品を読む目的の最右翼としたい。

皇帝のかぎ煙草入れ
ディクスン・カー 井上 一夫

東京創元社 2000
売り上げランキング : 66,292
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools