吉田修一パーク・ライフ
文藝春秋 ISBN:4163211802

たとえば、昼飯に何を食うか?財布の中身と相談。たしか昨日気に入りバンドのニューアルバムが発売されいる。はてなでタイムリーに書評を書きたい学者の時評エッセーも近日発売。カレーか?しかしカレーは昨日も食った。春菊そば?しかし午後の会議は長引きそう。なにせM川さんの仕切りの日なのだからと思いつつ、何故か足はコアビルの6F、ブックファースト銀座に向いており、昼飯問題は一時棚上げし(というかコンビニ弁当でピンと来たものにしようと決めようと思い)、文庫のコーナーをざっと眺めたあとフェア台ウラのビジネス書の新刊台をチェックして雑誌コーナーに移動し、週刊誌を手にした瞬間に昼飯問題が脳裏によぎり、コンビニでサーモンクリームのパスタを買い、カイシャの机で昨日もカレーで感じた違和感を今日も覚える。
昼飯問題の最大の問題は、ピンときたモノを選んだはずなのに、食べた瞬間口のなかいっぱいに広がるハズレ感に他ならない。
電車はスゴい発明だ。大量の人間や貨物をを破格の値段で運ぶことを可能にした。都会では地上だけでなく、地下も電車が走る。「パーク・ライフ」の主人公がスタバ女と最初に会ったのは、地下鉄日比谷線の同じ車両内だった。スターバックスの大繁盛も一時期の猫もシャクシもという状況からすれば、落ち着いた。客の大半は当時も今も若い女性。作中のスタバ女も似たような年頃。

「あの店にいる女って、なんかお高く留まってる感じしねぇか?『日本にもスタバ増えたのねぇ。私がロスにいたころには一軒もなかったのに』なんて言われると、その口つまみ上げてやろかと思うよ」と笑っていとことがある。

先輩の近藤さんのスタバに集う女イメージに反して、彼女は意外と敷居が低く、まるで友人のように話しかけてくる。そのフレンドリーさは達観した仙人ように思える。カフェモカは好き。ただ、スタバの典型的なたたずまい、自分と似た年齢の女ばかりの店内が馴染めなくなった。彼女はそこから消えた。
公園へ行くことが即、離脱にはならない。大半は。私が昼飯問題を保留して本屋に足を向けるように公園で昼休みを過ごし思いついたようにサンドイッチを齧るのだ。
おそらく、スタバ女の意識は公園上空を浮遊するしている。この芸当は普通はできない。そして彼女は自分とよく似た人を二人みつけ、未だ仙人になりきれてない方に声をかけた。
恋愛小説のように見えるし、恋愛小説として読むことも可能である「パーク・ライフ」は、実は仙人になってしまった女がこのままでいるか、人に戻るかを迷い、そして決断するハナシだ。
彼女は日比谷線で彼をみつけたとき、彼に賭けてみようと思った。恋愛小説のようだが、全く違う。