吉田修一「パレード」読了
(幻冬舎文庫 ISBN:4344405153)

ぼぉーっとした感じのH大4年の大学生、良介、売り出し中の俳優の彼からの電話を待つ女、琴美、雑貨屋の店長で自称イラストレーターの未来、映画好きで映画配給会社に務め健康オタクな直輝。都内の2LDKのマンションで暮らす男女4人若者たちはそれぞれのライフスタイルはばらばらで「共同生活」と呼べるほど連帯感はないままに彼等は暮らしいる。なんとなくクールな都会風のライフスタイルって感じだが、そんな気負いも彼等にはない。
普段の我々の日常生活がそうであるように、彼等の日々の生活にも様々な出来事がある。それは全員が共有しうる出来事であったり、個人的なことであったり、その中間の2、3人が共有できる類のものだったりする。
ハナシはそんな彼等の日常の一時期を、彼等それぞれの視点から語る形で進む。当然、そこでは様々な出来事に対する彼等それぞれの対処がある。そしてその対処は各々の何かに対する距離につながっている。興味があることや問題意識から行動を起こすのではなく、何かとの間合い感覚から、己が何すべきことをを決める、という案配で彼等はそれぞれの居場所にいるようにみえる。
解説の川上弘美はかなり腐心して書いている。彼女の腐心も無理なく、「パレード」は巧妙な伏線はとんでもなくキモだ。私は多少喋りすぎたきらいがあるが、兎に角「良介」から順に読むのとイイ。読後、大いにビックリする。