○季刊本とコンピュータ2003冬号を買う。

ICタグ特集が気になって購入。
東浩紀高木浩光の徹底討論をまず読んだ。
まだICタグコストが高いが、図書館での実験運用
始まっているらしい。
大学附属の図書館のhpで本の検索かけると、どこそこに分館にあります。今貸し出し中などの情報が分かる。
たぶん今は職員による手作業でやっているんだろう。
確かにICタグ導入は、図書館において本の管理は今より少ない頭数でこなせるようになるかもしれない。
発生する問題としては、メーカーである版元にどこまで図書館に集まった情報をフィードバックするかかな?
仮に回転率(貸出頻度)データを手に入れた著者が著作権侵害で訴えてきたらどうする?
ともかく、集めた(集まった)データの外部へ提供開示は慎重な方がいいかも。
あと、回転率(貸出頻度)が瞬時に出力されるので、貸し出し率の芳しくない傾向の本たちは棚から排除されるか、そうでないにしても今後同じ傾向の本についての購入に慎重になるかもしれん。公共財としての図書館とその蔵書って観点からするとズレるよなぁ。
二人の対談は「徹底討論」というより、挨拶程度の印象。
月刊誌ならまだしも、季刊でやるならもう少し
読み応えが欲しいと思うのは酷だろうか。

もう一方のICタグ特集、与那原恵によるルポ「本屋が万引きに苦しんでいる」は本屋的には確かに
気になる。
なんでも、コスプレ万引き娘がいたとか。
しかし一番気になったのはルポ中に出てくる
田口さん(ジュンク堂池袋店副店長)の言葉。

「書店員にとって棚というのは、自分が大事に育てた、いわば作品のようなものなんです。種まいて土を耕し、水をきちんとやって根を管理して丁寧に育てていくもの。だから棚の本を万引きされることは、本当に悔しいし、精神的にも落ち込む」

だから云々以降は、私もそう思う。スリップで管理するのは今は流行らないかもしれないが、足の遅い本たちは現状スリップ管理が一番向いている。売れたときにはスリップは残るが、万引きされるとスリップごと消える。もちろんPOSレジの売上データにも残らない。
従って、万引きされるスリップなしで、版元に電話やファックス注文することから開始しなければならない。自分に落ち度がないにも関わらず、そのような手間を背負わされる棚担当の遣る瀬なさは筆舌につくしがたい。

私が違和感を覚えるのは「棚は店員の作品」という比喩にある。
先に述べたように、図書館レベルではネットでの蔵書検索がかなり当たり前になっている。
大型書店チェーンでも、紀伊国屋ジュンク堂
蔵書検索に対して積極的に手を打ってきた先陣だと認識している。
だから我々ユーザーは書店に足を運ぶ前に、紀伊国屋のhpやジュンクのそれで有無を確かめ、無駄足を運ばなくてすむ利便性を手にいれているのだ。
そして、それは棚の構成を鑑賞しなくても買うことができるということでもある。
80年代リブロと今のジュンク堂の差はそれなのだと言ってもいいだろう。
ジュンク堂の棚は棚担当者の作品ではない。
というか、作品と意識している客はごく少数ではないか。
百歩譲って、それが「作品」なのだとしても、棚担当者のではなく、地下2階の部屋でバーコードを擦って単品登録している彼ら仕入れバイトの作品だ。