○禅の公案のような、面接本。
◇ウィリアム パウンドストーン 著「ビル・ゲイツの面接試験 」
青土社/松浦俊輔訳/ISBN:4791760468

論理パズルの本だとおもったら、違った。
優秀な人材を採用するために面接は如何にあるべきか?を多角的な視点から検証した「メタ面接の達人」という風情だ。

マイクロソフトに代表されるハイテク産業の面接官は求職者に突拍子もない質問をするという。

・ビリヤードの珠が8個あります。1個だけ、他より少し重いものをありますが、それを見分ける方法は、天秤にのせて比べるだけです。
重い珠を見つけるために天秤を使う回数で、一番少ないのは何回ですか?

・M&Mチョコレートはどうやってつくりますか?

前者は論理パズルで正解があるが、後者にはコレという正解はない。というか、面接官はそれを知らないのだそうだ。
つまり、被面接者が「答え」に至るのに問題に如何にアプローチしたか、発想とその思考過程を面接官は眺めたいということだ。
だから何だと言われれば、それまでだが。

肝処がわからないと、本書に不満を持つ読者もいるだろう。
実際、不思議な本だ。
面接の歴史、パズル面接の意義、実際のパズル問題とその回答、面接官が結局第一印象で採用/不採用を判断しているという考察など、本書は面接を多角的に考察したしたものだ。
面接の達人」の仲間では決してない。

本書を「メタ面接の達人」を形容したが、それは本書自体がまるで禅の公案のようで、通常経営戦略の解説書が好む論理的な記述スタイルから微妙にハズレていることによるのだろう。

あと、好みの問題だが、ガクガクした翻訳は私は好きだ。

○俺的関連本
◇中村敏雄著「メンバーチェンジの思想」
平凡社ライブラリーISBN:4582760732

渋谷望「魂の労働」
青土社/ISBN:4791760689