「book」

○辣腕雑誌編集者、独歩をリスペクト


図書館本、黒岩比佐子「編集者 国木田独歩の時代」(ISBN:9784047034174)を読み中。
「武蔵野」や「肉と馬鈴薯」の作者として知られる国木田独歩、彼には有能な雑誌編集者としての顔があった。編集者独歩はのちに独歩社という出版社まで構えるまで至った。が、事業的には大失敗した。
筆者黒岩さんの面目躍如は、編集者独歩の足跡である雑誌の掘り起こしに力を入れたことある。「編集者 国木田独歩の時代」は、そうした現物資料の裏打ちがばっちり効いて、指揮棒を振るいまくる独歩と雑誌作りをを支えた小杉未醒石井研堂、鷹見思水、坂本紅蓮洞、武林夢想庵など独歩人脈の俊英たちの当時の猛烈鼻息が聞えてきそうな臨場感があふれている。
独歩の辣腕ぶり、先進性は彼の考案した雑誌コンセプトに顕著だ。近事画報社時代の雑誌「美観画報」は日本全国の美人芸者写真をドバっと掲載したもの。今でいうグラビア雑誌のハシリ。「絵入史談」も早い。その宣伝広告は世界各国興亡の過去の跡に学ぼうと謳う「絵画を主とせる歴史書」なるコンセプト。学研の歴史群像シリーズじゃんか!コレ。
独歩社がつぶれてしまったのも独歩の先駆性があまにに時代より先に行き過ぎていたせいもあるのかも。そんなふうに今のぼくらが思うほど、独歩の雑誌コンセプトは今でもまったく古くない。
独歩の妻・治子の書いた「破産」は、独歩社旗揚げからつぶれるまでを描いたルポ小説。小説の性格上、小説内は名前は変えてあるが実在のモデルがあるわけだが、ただひとり「梅子」という女報道写真家のモデルが謎。この謎の女写真家に迫る黒岩さんの手練手管の調査ヂカラは圧巻!!


編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)
編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)黒岩 比佐子

角川学芸出版 2007-12
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