○秩序と俺流


近所の図書館に行く。雑誌のバックナンバーを物色。「SFマガジン」08年1月号掲載のテッド・チャン「商人と錬金術師の門」、コピーをとる。「東京人」掲載、細馬宏通先生の若島正「ロリータ、ロリータ、ロリータ」評を読む。
以前から気になっていたが、図書館の職員が黒のベストを着ていて、胸のところに「TRC」とある。TRCは図書館に本を納める仲買い人みたいな会社だが、地方自治体の図書館へ人材派遣的な置屋シゴトもビジネスモデル化している(参照)。
なんか俺の図書館をTRCに乗っ取られたような、やるせない気分。ま、おれの図書館でないけどね。つーか、図書館運営業務委託の入札ってどういう具合でされたのか気になるところ。共産党区議あたりを焚き付けて調べてもらおうか。
古川薫「空飛ぶ虚ろ舟」の単行本、蔵書お役御免でリサイクル本棚に発見。馬琴が空飛ぶ円盤UFOを見たというハナシ。積ん読が今にも崩壊しそうなわが家を思い、回収を断念する。


田中徳三監督「座頭市の唄が聞える」を観る。後半橋の上でシーンが印象的。逆光で市も敵もシルエットでチャンバラ。撮影は「用心棒」や「羅生門」の宮川一夫
盲目の男が逆手長ドスで瞬時に三、四人を斬ってしまう殺陣シーンが見せ場の勝新座頭市」。ストーリーがギクシャクしていて殺陣シーンの痛快感を削ぐような残念な作品が散見されるなか、本作「座頭市の唄〜」はストーリー展開もテンポよく、上等な出来映え。
以前から座頭市シリーズは盲目の剣の達人というキャラクターを持て余し気味だと思っていたが、今回は市の聴覚を混乱させる敵ヤクザの作戦があり、そこがアクセントになっている。よい!


コーマック・マッカーシー「血と暴力の国」を読む。やっぱりホッブズ的なもの、国家が抱える闇みたいなものがテーマっぽい。
シュガーは殺し屋。ヤツにとって法律も国も意味もへったくれもない。ヤツはヤツ流儀にのみに従う。たとえばコイントス。表か裏か。その意味で俺流の権化の殺人屋。かたや、保安官ベル。彼は旧秩序の化身。ふたりは武器を持ち、場合によっては人も殺す。ベルはシュガーの出現に際し、自身の保安官としての職務に根源的な危機感を抱きながら、これまで彼がしてきたように保安官然として振る舞い、捜査する。それが自分の胸でうづく不安を帳消しにする最良の方策だと自分に言い聞かせるように。
萱野稔人稲葉振一郎あたりのこの小説についての意見感想知りたい。コーエン兄弟「ファーゴ」は観たはずだが、全然覚えてない。「ノーカントリー」前にみなおすか。




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