松尾スズキ監督「クワイエットルームにようこそ」を観た。
http://www.quietroom-movie.com/


このあいだの水曜日、シネカノン有楽町一丁目で「クワィエットルームにようこそ」を観た。
毎週水曜日渋谷の映画館が基本千円均一ということで、「エディット・ピアフ愛の讃歌」を観ようと企てていたが、時間があわず断念。代わりに有楽町のシネカノン一丁目で「クワイエットルームにようこそ」を観賞。満席で九割方女子だった。松尾人気なのか?ちなみにシネカノンも毎週水曜は千均。
映画「クワイエットルームにようこそ」は、芥川賞候補にもなった松尾の同タイトル小説を映画化したもの。監督も原作者である松尾スズキがこなしている。
目を覚ます明日香(内田有紀)は身動きできない。寝台にベルトで拘束されているという状況が飲み込めない彼女に、「ここは精神科の隔離病棟で、あなたは同居人の哲雄(宮藤官九郎)の同意でここに入院しているのだ」と看護婦の江口(りょう)は告げる。
コラムの締め切りのことを思い出し、退院したいという明日香に、診察と哲雄の同意がなければ駄目と突っぱねる病院側。退院できない理不尽をのろいつつ、明日香は閉鎖病棟の住人たちとふれあい、彼女たちの中に自分発見し、それまでの自身の荒れた生活を振り返る。
と、書くと重そうな内容のようだが、院内の出来事は小ネタ満載で面白く描かれている。如何にも退院許可がおりたかのように慇懃に挨拶し、脱出を図ろうとする着物メガネの婦人金原(筒井真理子)は俺的にツボだった。
もうひつつのツボは、明日香が哲雄に「うざい」と言わせるシーン。この「うざい」はすごい。「愛している」の意味でもあり、同時に「さよなら」でもある。見せ場であるのに哲雄役のクドカンのさらっとした軽さも心憎い。
さよなら。閉鎖病棟からの退院は哲雄との別れでもある。明日香はどこへ帰るのか。エンディングで、タクシーが土手沿いを疾走するシーンが忘れられない。松尾スズキ、また撮ってくれ。傑作。