○買った本

佐々木譲「笑う警官」
(ハルキ文庫 ISBN:9784758432863)


野口武彦新選組の遠景」
(集英社 ISBN:9784087747133)


佐々木譲の「笑う警官」は、「うたう警官」を改題文庫化したもの。「うたう」というのは、密告するという意味の警察内隠語だと書評で知った。「うたう」という隠語のザラっとした感がなんともいえない感じで、直感的に面白そうだなと思っていた。
けども文庫化の際、タイトルが分かりづらいとの版元サイドの意向を汲み、「笑う警官」に改題したようだ。
「うたう」のほうが断然インパクトあったと思うんだけどなぁ。
もう一冊が野口武彦新撰組」の遠景」。子母沢寛新撰組始末」が世に出たのが昭和三年だった。同年昭和天皇の弟、秩父宮会津松平家から嫁をもらった年でもあった。当時の会津の新聞には「これでやっと朝敵の汚名が晴れた」と記事に書いたとか。
松平容保にしても、その手下であった新撰組にしても名誉回復に相当な歳月を必要としたわけだ。
ところが時代が変わり、今や新撰組ファンとか沖田総司様love!なんて変なひとたちがにわかに増殖し一大勢力を形成している。
こうした新撰組人気を遠くに見据え、あえてその周辺を掘り起こしてみようってのが著者・野口の算段のようだ。
だから当時の文献を改めてひっくり返すというより、問題は資料を作家たちがどう「料理」したかという新撰組資料解釈の足跡追尾が手段となる。別の言い方をすれば、資料解釈のなかで新撰組は意味を与えられ続けてきたわけだ。
無垢で可憐という鉄板な、沖田総司イメージの創作者として司馬遼が暴きだされる。いやーこれはもっと早く手にするべきだったナ。