全国高等学校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園の主催者である朝日新聞の記事には、野球特待生制度の日本学生野球憲章に違反問題に関して、微妙なスタンスがかいまみられる。

asahi.com,「高野連、“夏”へ応急処置 特待生制度」
http://www.asahi.com/sports/bb/OSK200704210024.html

――指導不十分だったとの認識は。

 「05年11月の通達以降、各都道府県高野連と打ち合わせ、フォローアップをしてこなかった点は反省している」

昨今、その意義自体を疑問視される日本学生野球憲章だが、高野連はこれを見直すようなことは考えていないようだ。また、今後同じような憲章違反があった場合、いかように処分するかについても、同連は明確にし示していない(朝日もなぜか訊かない)。
野球特待生制度がはびこるのは、大阪や神奈川など高校数が多い府県とそうでない県とがあるためだと思う。どの地方大会でも似たり寄ったりのレベルと出場校数なら、わざわざ他府県に野球進学などしないだろう。
「甲子園に出て、プロの目に留まりたい」と思う子供やその親たちが、強豪ひしめく府県より比較的甲子園の切符に近い県への進学を決断することは悪いことではない。くだんの憲章はこうした子供の自分の将来についての明確なビジョンとそれにまい進するアプローチまでを取り締まることはできない。
では、高校側が悪いのか?といえば、高校側を安易に責めるようにも、高等教育とはなにかといった原理に立ち返ると、これも微妙な時期にさしかかっていると思われる。
というのも、卓球やサッカーなど他のスポーツにおいて特待生制度は歴然ととあるからだ。もちろん各競技団体はこれルール違反ともしていない。
つまり特待生制度で野球を除外することは、スポーツに優秀な成績のある生徒に奨学金施すというスポーツ特待生制度のコンセプトを台無しにしてしまいかねない。一体高野連は高等教育をどのように考えているのか?
苦肉の策であるが、参加校の多い神奈川や大阪は地区大会3位まで甲子園出場させるなどルールの改定が必要だ思う。だが、朝日側からそのような質問が高野連にぶつけれてはいない。というか、どうして多くの高校側が憲章違反起こした調査レポートが抜け落ちている。また、憲章の見直しについての質問もない。結局質疑者と応答者は同じ穴のむじななのだ。
主催者としての朝日新聞は、原則都道府県一チームを死守したいだろう。夏の甲子園大会看板のありがたみが減るような真似はしたくない、というのが本音ではないか。
ありがたみ云々でなくても、仮りに大阪の枠を増やしたとしよう。すると大阪チームが優勝をさらう確立は増える。また、大阪同士の試合もあるだろう。朝日はそうした事態を危惧しているのではないか。
たとえば、夏の甲子園は新聞の拡販材料とみた場合、大阪や神奈川のみに配慮することなど、販売所対策としては得策ではないはずだ。
野球特待生憲章違反騒動は、主催者である高野連朝日新聞という「大人の都合」が引きおこした出来事なのだと思う。