浅羽通明「右翼と左翼」
(幻冬舎新書 ISBN:434498000X)


右翼/左翼についての、そもそも論を導入に、国内の右と左の現状スタンスを解説したもの。よくまとまっているので、右翼って何だ?左翼ってもしかしてカッコイイ?とか、ふと思った若者は読むとためになるかも。
コント・レオナルドの往年のコント、自衛官と日雇い系オヤジとの問答のやつを思い出した。たしか花王名人劇場でみた。
自衛隊って何するんですか?じゃ、自然災害と戦ってるんですか?って感じで、レオナルド熊扮する自衛官に詰め寄るオヤジに、石倉三郎扮する自衛官はなぜか社会党に配慮した返答(答弁)を口にし、自分の存在意義を危うくしてしまう。そんな設定。会場の客はかなりウケていた。
80年代半ばに観たはずだから、政治の季節はとっくに過ぎていた。しらけ鳥も飛び立った頃だ。なのに、なのに客をウケた。まだ、政治風刺がテレビのむこうのお茶の間に通用する時代だったのか。
たぶん日本の高度成長はある意味ラッキーだった。簡単にいうと、冷戦構造がその大枠で、これに平和憲法日米安保という条件が加わり奇跡的経済復興をとげた。
くだんの自衛官とオヤジのコントがウケた80年代半ば、あの当時ニッポンのサラリーマンだった世代は、案外そうした幸運をよく知っていたんじゃないかと思う。
今また第何次かのお笑いブームだけども、当時のように社会党系に配慮した受け答えをする自衛官が笑える下地は、たぶんない。
それは戦後復興を果たした経済的繁栄を謳歌するニッポンに生まれた世代が世の中の大半を占め始めたことと関係があるだろう。
コント・レオナルド自衛官とオヤジの問答を会場で笑っていた往時サラリーマンたちにとって、平和憲法命の社会党に配慮するような答弁を繰り返す自衛官は、彼ら自身のカリカルチャであったはずだ。
いまじゃ、それが笑えない。それは、当時社会党を支えた左翼思想が、経済的な豊かさをまえに地すべり的にメインカルチャーからサブカルチャーへと転落してしまったせいなんだろう。対抗勢力の右もこれに同じ。



右翼と左翼
右翼と左翼浅羽 通明

幻冬舎 2006-11
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