高木徹「ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争」読了
講談社文庫 ISBN:4062108607


「ロード・オブ・ドックタウン」を去年年の瀬にみた。スケボー文化の黎明期に題材にとった青春映画という風情。
スケボーはサーフィンの代替物として生まれたようだ。
少年たちは本当は波に乗りたいのだが、いい波のくるとこは限られているし、そこには怖そうなアニキたちが先に占拠してるため、思う存分サーフィンが楽しめない。その鬱憤を解消するために海へ向かう途中の舗装道路を波に見立てて滑るというのがスケボーの発祥、ということらしい。
はじめ代替物だったスケボーが子供の間ではやり始めていることに気づいたヒッピー系サーフショップ経営の男は、スケートボードが金になると算段、スケボーの上手い子供たちをチームに束ね、自分の店ブランドのスケートボードの広告塔にすえる。広告塔をメジャーにする手っ取り早い方法として、スケボー大会に少年たちを引率していく。
当時まだ子供の遊びにすぎないスケボー。その大会というのは、くだんのサーフショップの男のようにスケボーが将来もっとデカいマーケットになると踏んだ大人が運営しているのだと了解した。
儲かると踏むとそれはすぐに競技化するというのは、アメリカ的な発想のように思った。ホットドック早食いや大声、腕相撲など等。どんなにバカバカしい能力にも競技を勝ち抜き一等を奪れば、勝者として祝福される。それがアメリカ社会の一面なのかもしれない。
高木徹「戦争広告代理店」を読み終え、PR(Public Relationsの略)業においてもやっぱりその原理はそのまま貫かれているんだなと思った。
全米の6000社あるというPR会社は、ある案件について、それぞれの依頼主のオファーに沿ったPR合戦を繰り広げ、最終的な優勝劣敗の後、もっとも優れた(世論形成に影響を与えた)PRの成したPR会社として賞賛されるわけだ。簡単にいえば、勝つか負けるかに集約されるということ。
白か黒でなく灰色もあるし、というか白黒つける前にその前提を疑え!とうのが養老さんの「バカの壁」の骨子だと思う。
たしかに競技化されるとわかりやすくなる。けれどもホントにスケボーを競技化してイイのか。
これが世界のスタンダードだとは高木は言ってないが、そのような思考勢力が確実に力を持っていると彼は確信しているのだろう。それは高木がなんでも競技化のアメリカ流のバカの壁思考に染まりはじめている兆候だと思う。



ドキュメント 戦争広告代理店
ドキュメント 戦争広告代理店高木 徹

講談社 2005-06-15
売り上げランキング : 6,162

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか
戦争プロパガンダ 10の法則
宝島社新書「イラク戦争と情報操作」
ユーゴ紛争はなぜ長期化したか―悲劇を大きくさせた欧米諸国の責任
情報操作のトリック―その歴史と方法