yasulog2005-11-27

北野武監督「TAKESHIS'」を観る


たけしの追っかけの女の子が出てくる。
マスコミなどの前評判から「TAKESHIS'」は、監督北野武の虚像と実像の葛藤をユーモア的な悪夢で紡いだプライベートフィルムだと思っていたが、おっかけの少女の妄想のハナシだと思った。
つまり、岸本加代子京野ことみが担っている役は、追っかけの少女の妄想内の「あるかもしれない自分」なのだと思う。そして、売れないたけしも彼女の妄想の産物で、「私に手に届く距離のたけしさん」を具現化したものだと考えた。
つまり、追っかけ妄想少女は好きであるがゆえに、たけしを二人に分裂させ、羽振りのいいほうの愛人の自分やオーディション選考スタッフとして、売れないほうに冷たく接する自分やコンビにで一万円で10円の品物を買う客の自分や、雀荘で水を引っ掛ける女の自分を妄想し、そのたけし達と自分達の関係性やコミュニケーションを堪能しているわけだ。羽振りがいいほうのたけしのタップに対する情熱が過剰に描かれているが、アレも少女が希求するたけし像の具現なのだ。
80年代後半ごろ、たけしは自分を称して「たけし軍団軍団」としきりに言っていたのを思い出した。世間は「たけし軍団」がビートたけしというコメディアンの周りにいて、そのおこぼれにあづかる形で経済を成り立たせていると思っているかもしれないが、その「たけし軍団」に食わせてもらっているのは自分の方だと己のパブリックイメージを茶化してのコメントだったと思う。
TAKESHIS'」は北野作品のセルフパロディのように見えるが、実はたけしが大好きな少女の妄想が北野映画風なってしまっているということだろう。


TAKESHIS'」オフィシャルサイト
http://www.office-kitano.co.jp/takeshis/