○司馬遼には「豚と薔薇」という推理小説があるそうだ。

日本三大吉田というのを考えた。
吉田戦車吉田豪、そして吉田直哉だ。
吉田直哉NHKの元ディレクターの人。

NHK優れたドキメンタリー番組を残しているらしいが、そっちのほうはあまり知らない。俺が三大吉田に数える吉田直哉は、エッセイスト吉田直哉の方だ。
吉田の「まなこつむれば…」は、武満徹、司馬遼、山本七平、職人肌のカメラマン、取材対象者、手紙をくれた視聴者など番組製作を通じて知り合った人々のエピソード中心に綴られたエッセー集。
司馬遼についての記述も多い。そのなかで「司馬遼の小説は本来オーラルな質がある」という記述があり、なるほどと思った。以前から司馬遼の小説の下手くそ加減にクラクラしていたのだが、アレは書き言葉のコードに則った小説ではなく、講談話芸を書き記したものという素性のものかもしれない。座談の達人といわれる司馬遼だし、当人の資質はそのへんにあったのかも。
そんなわけで、「司馬遼太郎が考えたこと(1)」(ISBN:4101152438)を読んでいるが、タイトルの「考えたこと」というのは大仰すぎる。というか、司馬が綴る身辺雑記部分から浮かび上がる当人は、なんだか松本零司の例の三頭身のサエナイ男のイメージ。
司馬は天ノ橋立が嫌いらしい。あと夫婦そろって魚料理がキライで旅行先で鯛の焼き物を新聞紙にくるんで速攻捨てた、とある。
こんな男が近代日本を牽引する立役者、龍馬を書いていたとは!
「豚と薔薇」という推理小説があるらしいが、流行ってるから書けとの注文で、当人は推理小説など嫌いだといっている。理由はヨソ様の秘密を暴き立てる神経がイヤなのだと。
「豚と薔薇」の探偵はどんなヤラシ神経で事件を推理しているのか?読みたくてたまらない。