山本夏彦山本七平「夏彦・七平の十八番づくし―私は人生のアルバイト 」
(中公文庫 ISBN:4122017491

夏彦、七平のダブル山本による対談集。
山本夏彦は実にイイことをいう人だが、偶に暴走する場合がある。タモリになると言えばイイか。
妄想たくましくすればタクシーの運転手にも人力車の車夫にもかごかきにもなれる。夏彦のハナシに編集者が「ときどき女になるとおっしゃるのは?」と水をむけた件、以下156ページより引用。

夏彦 ええ、以下は「日常茶飯事」(中公文庫)に書いたことですが、男は女を追いかけて、はじめて男です。女は男に追いかけられたはじめて女です。そこで私も追いかけてみましたが、どこかウソくさいところがあります。いっそ自分が女になってみたほうが「エロス」がわかりはしないかなとなってみたのです。さあ七平さん、ある朝めざめたら僕は女ですよ。
七平 ?
夏彦 僕は姿見に立ちます。いつのまにか、まる裸です。その裸をためつすがめつします。顔は美人ですがそれは男どもが言うことで、こうして見ると紅おしろいをつければ美人でしょう。けれども胸の薄いこと、尻の小さいこと、両の手の細いこと、そして色つやの悪いこと、男たちはほめそやしますが、なに迷いにすぎません。つくづく見ると三文の値打ちもありません。僕は身をよじって、鏡に背中を映そうしました。脚と尻のつながり、尻から背にかけて弓なりの曲線を期待したのです。それはえぐったような彎曲でなく、平板でした。どこに女である証しにがあるのでしょう。これでは男とちがいありません。僕は女が女である部分ー男たちが追いまわして争う部分を見ようとしました。はじめから見たかったが恐れていた部分です。かっと目を見開いて(以下省略)

オッサン何ゆーとんねん!あかん、女をシミュレーションする夏彦想像してもうた。
対談っていうよりラジオのおしゃべりか。読むラジオ。好き。


夏彦・七平の十八番づくし―私は人生のアルバイト
山本 夏彦 山本 七平

中央公論社 1990-10
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