○ハーラン・コーベン「カムバック・ヒーロー」
(ハヤカワミステリー文庫 ISBN:4151709533)
「あきさみよー」とは、私の田舎沖縄の、感嘆を意味する方言。
あきさみよー、でぇーじなとぉーさー、と用い、標準的な日本語に直せば「あらまぁ、大変なことになってるね」となる。だから「あきさみよー」はニュアンスは微妙であるが、大雑把にいえば「あらまぁ」とか「おやまぁ」、「マジ!」などの感嘆的な意味を担っている。昨今のあまり方言を話さない沖縄の若い連中でも「あきさみよー」と言っているように思う。私の弟も、彼の1歳になる息子が食事中に茶碗を落っことして割ったりすると、「あきさみよー・・・」とため息まじりに呟いたりしている。
マイロン・ボライターはスポーツエイジェント。日本でスポーツエージェントといえば、ダン野村氏のような胡散臭さをイメージだが、契約の国アメリカではスポーツ選手とチームの契約も代理人が首を突っ込むシステムが確立されているようだ。マイロンは自身もバスケットボールの選手だった。しかもNBAで将来を嘱望された。だが、ある事故が彼の選手生命は奪ってしまった。腐らずにリハビリに励んだ彼は、新たな自分の活躍の場にFBIを選んだ。そこから又転し、現在に至る。
FBIで習得したタフな交渉術と人脈は、今日のマイロンの財産だ。スポーツエージェント業とアマチュア探偵の両方においてそこでの経験とつながりは大いに利するものとなってる。
こうした彼の挫折と巻き返しの経歴は、マイロンが頑張り屋さんであることを示している。いわゆる頑張り屋さんは鼻につく場合もあるが、マイロンはそうでない。彼は相当に清々しい。マイロンは清々しくてイイ奴だが、違和感を感ずる部分がある。以下34ページよりマイロンと彼の恋人ジェシカとのやりとりを引用。

「話せば長くなる。でも嘘じゃない。いまのぼくはプロのバスケット・ボールのチームの、正式なプレイヤーなのさ」
沈黙。
「わたしプロのバスケ選手と寝たことなんて一度もなかった」とジェシカが言った。「で、これでマドンナみたい(ライク・マドンナ)になれるのね」
「<ライク・ヴァージン>だろ?」
「ワーオ。本物の懐メロファンだわ」
「うん。でもしょうがない。ぼくは80年代の男性なんだ」

ワーオって!しかもこのワーオ、わりかし頻繁に出てくる。翻訳の中津さんも苦心した末そうしたのであろうが、「アリーmyラブ」の声優以外にこんな日本語を話すのは不自然というか不気味すぎる。
ってことで、「ワーオ」は「あきさみよー」に脳内変換で読むことにした。
あきさみよー、全然書評じゃないさー。