片岡義男著「日本語の外へ」読み中。

最近、「ありえない」という言葉を頻繁に耳にする。
どうやら、流行語のようだ。
はたして、世の中にありえない出来事がそれほど頻繁に起こっているのかと疑念に思うほど、街を行き交う人々が会話の端々で「ありえない」を連発しいてる。
流行語の例に漏れず、言葉本来の意味で用いられているのではなく、同意とも否定ともつかない曖昧な相づちのとして発声されているようだ。
一世を風靡した「マジっすか!」の効果に似ている。
流行語とは、ある特定のサークルに参加するための符丁である。だから意味などないのだ。
その弱点はそれがフレームとして機能してしまう点だ。
別の言い方をすれば、流行語は問題解決の糸口を隠してしまいかねないということだ。
日本語の外へ」は、「動物化」という便利な用語をなしに、いま日本で起きている現象を的確に捉え、考え抜いた、義男の思考の軌跡だ。