京極夏彦「怪ラジオ」一端終了につき雑感
http://www.tbsradio.jp/kwai/


土曜日夜のTBSラジオ「怪ラジオ」はプロ野球オフシーズの埋草的な番組のひとつだった。ゆえにプロ野球シーズン到来をもって、番組は三月で一応終了した。
番組内容は、作家京極夏彦を肝いりに、角川書店「怪」編集部の郡司聡、妖怪系ライター村上健司の常連と毎回のゲストがお題について侃々諤々するトーク番組の体裁。
しかし、語るお題は「妖怪の周辺」と銘打つものの、「菓子パン」、「時代劇」、「特撮」、「古本」、「パチモン」という具合であまり妖怪と関係なかった。要は京極と京極の仲間たちが、ふだん飲み屋で喋っているような駄バナシ、雑談を番組にしたような、風情たっぷりの番組だった。
これにはラジオの前の妖怪大好きっ子リスナーはちょっとガッカリしたかもしれない。けれど、個人的にはそんな駄バナシ感がツボだった。体系めいたイメージに昇華することなく、駄バナシがひたすら駄バナシとして流れていくのがなんとも贅沢。オッサンの余暇としての駄バナシ、雑談を堪能するという意味で、「怪ラジオ」はいまどき得難い最良の番組だった。もしかするとタモリが担う役割の一部を今後継承していくのは、案外京極さんかもしれない。なんて言うと番組の風情は伝わるだろうか。
終わった番組についてグダグダと書いてみたが、番組サイトで全放送の抜粋を聴くことが出来る。妖怪にさらさら関心なくとも、オッサン的贅沢の極みである雑談に興味もたれた方々、是非御一聴されたし。
そういえば、「怪ラジオ」のまるっきり雑談な感じは、関口やら榎木津やらの例の連中が集合し、京極堂の蘊蓄に翻弄されたり、いきなり達見を吐いたり、迷言を強弁したりする様子と似てなくもない。京極堂シリーズは一応ミステリーの看板を背負うが、駄バナシの多幸感こそが執筆の原動力なのかもしれない。



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京極作品のなかで「巷説百物語」シリーズが一番好きかな。京極さんの、ある時代劇ジャンルへのオマージュでもある。