○見世物興行師の職務と論理

かえるさん(id:kaerusan)の「ラジオ 沼」第226回放送、見せ物映画のウィリアム・キャッスル(1914-1977)のハナシが面白かった。
ウィリアム・キャッスルの映画は未見だが、観客に生命保険をかけたり、映像に合わせて微電流が流れる装置を観客席に仕込んだりという案配で、その発想は映画人というより見せ物興行師のそれという御仁だったもよう。
映画「ティングラー」のティングラーとは、人の背骨に取り憑き、人の恐怖を糧に成長する生き物で、取り憑かれた人は背骨をティングラーに侵食されて死んでしまう。死なないためには大声で叫ぶこという荒唐無稽な設定。
かえるさんは以前もこの「ティングラー」をビデオで観たらしいが、今回と前回とでは見方が変わったというのが今回の放送の肝だった。
以前観たときは、キワモノを嗤う風に観ていたが、今回は荒唐無稽な着想とそれをさもホントのことのように語る見せ物興行師的な語り口にほとんど感動したという。
かえるさんは、科学的に考えるとき論理の飛躍は良くないとされるが、最近は論理から論理へのなんの根拠もない跳躍力や予想もつかない着地点の意外さに魅力を感じるも話されていた。
最近私が関心を持っているマックス・ウェーバー流にいえば、学問を生業とする者の科学的な思考と見世物興行師の思考は、どちらが良くて悪いと言えるものでなく、それぞれがその職務に最適な論理構成を選択するということか。
つまり、我々が普段良しとしている論理的思考とは、従来特定の職場における物の見方というツールだったと言えるかもしれない。
かえるさんの(論理の)跳躍力への関心は、おそらくデジオでおしゃべりをすることで、語りの奥深さに触れていることと無関係ではないと思う。


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参照:
・かえるさんのデジオ「ラジオ 沼」
http://www.12kai.com/numa/

デジオポータル、「デジオ宇宙」
http://dedio.jp/