高木徹「ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争」読み中 その2
講談社文庫 ISBN:4062108607


ボスニア・ヘルツェゴビナセルビアの内紛が国際的な関心事に発展する経緯を、ボスニアサイドから国際世論形成を請け負ったPR会社の活動を軸に、当事国、マスメディア、合衆国政府および議会の要人の紛争へのアクションをつづったノンフィクション。
PR会社のジム・ハーフとそのチームが主役のように思っていたが、そうではなくて彼らが手練手管でこさえた内紛に対するイメージそのものが主役であるかもしれない。
早いハナシが、「民族浄化」というキャッチーな造語が一人歩きしだした結果、「紛争」は国際的関心事に化けてしまった、ということのようだ。
率直な感想としては、そう言われても。。。という気分が残る。
たとえば、中台間で内紛勃発の際、台湾はボスニア・ヘルツェゴビナ政府がしたようにアメリカのPR会社を雇うだろうか?もしかしたらもう雇っているかもしれない。けれど、このPR会社を雇うか否かと国際世論形成との間に因果関係があるものなのかどうか、「戦争広告代理店」を読みすすめても分からない。
というのは、PR会社はそれが商売なので「それは全部俺の手柄だ!」というに決まっているからだ。
セルビアミロシェビッチが国際世論やPR戦略に無頓着な政治家と描かれているが、本当にそうなのか。高木はミロシェビッチのインタビューをとってないようだ(まだ、途中だから分からんけど)。

ところで、私の今最近の関心事は、スピルバーグミュンヘン』がアカデミー賞候補にノミネートされるかどうかということ。
町山智宏によれば、パレスチナテロに対するイスラエルの報復行為を素材としているために、アメリカ国内で反・イスラエル的とユダヤ系のみならずリベラル系メディアも叩いているそうだ。(http://tbs954.cocolog-nifty.com/954/2006/01/110_9a56.html)。
ノミネートすらされないのであれば、それはアメリカ内部のユダヤを勢力の「健在」を意味するのかもしれない。
だが、私にはそんな簡単に世論が振れるほどアメリカ諸君もそんな馬鹿じゃないと思うのだ。ま、極東の島国から眺める者の経験的な感想にすぎないのだけど。
ま、そんな風にアメリカをみている私からすると、「ドキュメント 戦争広告代理店」はPR会社のPR本ではないかって思ってしまう。